Archive for 1月 2010

【先輩は希望の光】
予餞会の準備が始まります。

19日から3学期が始まり、生徒たちも元気に余市に帰ってきました。生徒たちはこれから卒業生を送り出すための予餞会の準備に取り掛かる時期です。お世話になった先輩を送り出そうと、毎年、思いのたくさん詰まった心温まる送り出す会、先輩の卒業を祝う会、先輩の未来を応援する会が開かれます。


なぜ、そんなに先輩に対しての思いがそこにあるのか。それは、先輩と後輩の間に築かれる関係が、そうさせているのだと思います。

北星余市高校において、先輩たちはよきお兄さんであり、よきお姉さんです。先輩といっても、自分と同じ年の先輩もいたり、年下の先輩もいたりするのですが、それでも先輩は先輩。最初は、一般的な高校にはないこの感覚に戸惑う生徒たちですが、そのうちになれてきたりします。


北星余市高校に入学するということは、子供たちにとって、とても不安なことだらけだと思います。家から離れ、下宿生活を送る。そこでは今までの甘えは許されないわけです。特に人間関係のトラブルによって不登校を経験した子供なんかは、どんな人が集まっているのか、そこで過去と同じようなトラブルが起きたらどうしたらいいのか、そう不安になることと思います。やりなおしをかけて、自分の人生に真剣に向き合ってきていればいるほど、不安なことでしょう。「もう、失敗は許されない」強迫観念にも似た不安と恐怖を振り払うように前に進もうとする。


そうして入学した1年生にとって、先輩たちは希望なんです。未来の自分の姿を想像させてくれる希望。明るく、元気そうにしている先輩たちを見て、自分もこうなりたい、なれるのかな…と考える。けれど、時間がたって話を聞いてみたら、先輩だって1年生の最初のころはそうだったと知る。北星余市高校で学校生活や下宿生活を送るなかで、苦しみも喜びも、沢山の人に支えられる中で味わいながら、そんな姿に成長しているのだと知っていくわけです。それはまさに希望です。



Photo by Sam Ilic Photography - STAGE88


そして、そんな先輩たちは後輩の話をよく聞いてくれる。見ていて本当にやさしいな、、、そう思います。それは、先輩たちが過去にそういう痛みを経験しているからなのでしょう。1年生の最初に不安だった自分の痛みを知っている。入学前に不安だった気持ち、でも自分の人生のためにそれを振り払うかのように一歩踏み出した勇気、そういうのを知っている。同時に、そんな自分に優しくしてくれた先輩の温かさも胸に刻まれている。だから、2・3年生にとって、入学したての後輩は、「他人」であるけど、「自分」なんだと思います。


北星余市高校の先輩と後輩の間の底流に流れている関係、普段バカなことを言い合ったり、ふざけたことを話しているようで、実はそういう関係がそこにある。


そんな先輩たちだから、卒業を心から祝うことのできる予餞会が毎年開かれる。そして、先輩たちが後輩たちに心から感謝して卒業していく姿が見られるのだと思います。

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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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