Archive for 6月 2012

NPO法人青少年就労支援ネットワーク静岡、10周年記念イベント、宮本みちこ先生の講演より


〇2002年の著書「若者が『社会的弱者』に転落する」で、若者はわざわざ自由を謳歌するために非正規雇用の道をわざわざ選んでいるという見方は間違いだ、と書いた。

〇行旅死亡人問題というのがある。行旅死亡人とは、飢え、寒さ、病気、もしくは自殺や他殺と推定される原因で、本人の氏名または本籍地・住所などが判明せず、かつ遺体の引き取り手が存在しない死者を指すもの。この行旅死亡人の中には、働き盛りの年齢であるべき現役世代にもいる。
NHKでそういった人たちの過去をたどっていく番組を放映した後、若者たちから「明日の自分を観る思いだ」という反応が多数帰ってきた。

〇就労支援というのは「職につなげればよい」という話ではない。

〇働き盛りの若者が過酷な労働環境の中で体調を崩し、離職。その後ホームレスになるという話は後を絶たない。

〇かつては婚活や就活というのは、縁故、つまりおせっかいによって成り立っている面も多くあった。その点、静岡方式はおせっかいなおじさんおばさんによって活動が保障されている。今の日本の社会は「最終的には本人が決めることだから」と口にすら出さない。

〇行政組織が縦割りで有効に機能していないという課題がある。

〇生活保護の受給率が急増している。戦後最大。中でも一番増加しているのは60代だが、30代・20代の受給者が大幅に増えている。働ける人たちが働けないという現状。こういう人たちが生活保護を高齢期に受給するとなると、20兆円もの予算が必要となってくる。これはこれで問題だが、それ以前にはたしてそういった人たちがここまで生きられるかどうかという問題もある。

〇よりそいホットラインというのがある。常時30~40もの回線を用意し、相談を受けているが、常に鳴りっぱなしの状態である。この日本の状態は壊れていると感じている。

〇義務教育における学力とはなにか。後期中等教育を修了することは大切なことだが、単に卒業証書を与えるためではない。

〇「将来は明るいのか?」というアンケートに、日本は5%、フランスは26%しかYESの回答がない。「終身雇用のスタイルをとっている国は低い」とする説がある。「グローバル経済の流れの中で、終身雇用のスタイルを保つ」ために、終身雇用の制度の周辺から崩していっている。そのことに問題があるという見方がある。若者はその制度の中核に入って行けるかどうかが、鍵となる。しかし、周辺に追いやられているという実態がある。それが資格競争を激化させているという見方もあるし、進学プレッシャーが両国ともに重い。能力主義、メリトクラシー(個人の持っている能力によって地位が決まり、能力の高い者が統治する社会)。

〇現在働いているが、それが「教育訓練」につながっておらず、キャリアの積み重ねになっていない。読み書き計算などの基礎的な学習への支援、資格試験の勉強。「空間を埋める橋」が必要である。学び直しの必要な若者がいる。本質的な問題は進学させるかどうかというところではない。



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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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