Archive for 10月 2012

出来事を通じて得られること。

今日は2012年度の第2回学校見学の日。10組23名の方が参加してくれた。中学校の先生が引率してきてくれた組が2組も。今までそんなことなかった。昨年、余市町内の中学校の先生が引率して参加してくれたが、2年連続で中学校の先生が来てくれたのは、「北星余市」への認識というか、イメージがかわってきてくれたということなのかな。

10:30スタートで冒頭のあいさつをした。2回目の学校見学会では、トンボ玉というガラス玉をつくるのだけど、「楽しむコツは、いいものをつくろうとしないこと」という話をする。「いいものをつくろう」「誰かにほめてもらえるものをつくらないと」と思って創ったって、なんにもいいものはできない。そこには中身のないものができあがるような気がする。

市場経済の場においては、消費者が認めてくれるいいものをつくらないと売れない。だから、お客様が望むものを創らねばならないという前提がある。しかし「人の望むものは何か」ばかり追いかけているうちに、気が付けば大切なものを失っているような気がするのである。

ガラスを火であぶるという体験をしたことのある人は少ないだろう。ガラスを火であぶるとどうなるのか、例えば、そういう自分の中に無意識にあるはずの問いに目を向けてほしい。溶けるのか、色は何色に変わるのか、赤く燃えるのか、オレンジか、はたまたガスコンロのように青くなるかもしれない。そうして、あぶったらどうなったか、その場で起こる変化を楽しんでほしい。ガラスを火で温め、急に温度をあげるとガラスは「パチン」といって飛び散る。予想もしないそんな現象に出くわしたとき、そういう変化、出来事を楽しめる。「なんでだろう」と素直に思える。そういう人は強いと思うし、得るものも大きいと思う。それには「認めてもらえるいいものをつくらないと」という気持ちは邪魔な気がする。ガラスは急に熱すると割れるものであって、水飴状にグニャーンとさせるには少しずつガラスを熱していくものなんだということを理屈と体で感じる。

疑問に思い、自分なりに推測し、目の前に起こった出来事をありのままに受け止めながら考えを巡らせる。その流れを楽しむ。そういうことを多く経験し学びを得た者が、豊かな生き方のできる人間なのだと思う。僕は、そういう体験を子どもたちにさせてあげることがいいのではないかと思っている。なんか、そういう企画、考えようかな。

中学生くらいの子ども達のなかに、そういう生きる楽しみ方を知っている子がどれだけいるか。成績のいい子どもの中だとしても、少ないと思う。まして、学校の勉強が苦手な子なんかは、「俺は勉強ができないから、ダメな人間だ」と思っている子は多い。もったいないと思う。

という気持ちを込めて話したけど、伝わったかな。ま、そこまで話してないから、伝わってないか。

それにしても、生徒たちが参加者の方を引率してくれたのだが、この子達も本当によく成長したな・・・とあらためて思った。学校の説明なんて、僕の説明なんかより全然わかりやすかったし、気遣いもよくよくできてた。素敵な子たちだよ、本当に。お互い足りないところを補い合って、協力し合って進めてくれてた。こんな素敵な子たちも、3年前までは暗闇の中を歩いていたんだと、世の中にはそういう素敵なものを潜在的に秘めていながら、今、暗闇の中で生みの苦しみをしている子たちがいるんだと思うと、北星余市は本当に大切にしたい場所だと、彼らをみて、あらためてそう思った秋晴れの一日だった。



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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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