Archive for 6月 2014

少年院出院者に高校教育を受けさせてもいいのではないか。

意外と知らない人が多いのが、少年院は教育の場であるということ。法務省の管轄であり、矯正の場であり、犯罪を犯した少年少女がいくところであるから、子供版刑務所という理解をしている方が多い。しかし、少年院と刑務所は存在意義が違う。

実際、少年院とは別に少年刑務所というのが全国7カ所(函館、盛岡、川越、松本、姫路、奈良、佐賀)にある。

少年院は家庭裁判所に保護処分として少年院送致を言い渡された少年が入れられる。それは少年に健全な社会復帰をさせるための”矯正教育”を受けさせる場として存在している。一方で、少年刑務所は保護処分(保護観察や少年院送致など)よりも懲役や禁固などの刑罰を科すことほうがふさわしいと判断され、刑事裁判にかけられ実刑となった場合に収容される施設。全く、存在意義が違う。知らない人がイメージする少年院の存在意義、像はどちらかというと少年刑務所だと思う。少年刑務所も見たことはないけど…

少年院の先生たちは、少年院を出た子供たちの未来を案じている。ここ数年、少年院の先生たちと交流を持たせていただく機会が何度かあったが、どの先生もそうだった。

少年院の先生たちが、送られた子供たちと接する期間は、だいたい長くて1年、短くて半年だ。この期間に子供たちと向き合い、子供たちが社会に出て二度と罪を犯すことなく幸せに自立して暮らしていってほしいと願っている。

が、実際は、出院する子供たちにとっていくつかの厳しい現実が待っている。

そのうちの一つに少年院を出た子供たちを受け入れてくれる学校はほとんどないということがある。

犯罪白書のデータをみればわかるが、少年非行のピークは「15の夜」(尾崎豊ね)。そこで少年院に入った子供たちは出院後どうなっているのかというと、多くはそのまま働くのだ。学校では受け入れてくれないので、高卒認定試験を受け、高卒と同等の資格をとって、院内で資格取得に励んで、自立のために職に就く。

選択の幅が広く用意されている中で子どもたちがそういう道を選ぶのと、学校教育が「そういう子」は受け入れられませんと門を閉ざされている中でそういう道しか歩めないのとは、大きく違う。

少年院を出院した子どもたちの中には、まっとうに生きたいと考えている者もいる。私の勤めている北星学園余市高等学校では、そうした少年少女の気持ちをくんで受け入れて来ているが、もう少し世の中の学校もそうした子どもたちを受け入れてあげてもいいんじゃないかと思う。高卒認定をとっているんだから、それでいいんじゃない?というのは、教育の本質を分かっていない。それなら、日本国民、みんな高卒認定でいいじゃないか。

『非行』を考える全国交流集会に参加したとき、とある複数の保護者が「出院後、いくつかの高校に問い合わせたが、『他の生徒へのリスクが高いから』」と受験もなしに断られた」と切なそうに語ってくれた。リスクってなんだ?僕にはよくわからない。

彼らには未来がある。教育は子どもたちの可能性にかける営みでもある。中にはものすごい力を秘めている人間も多い。もともとエネルギーのある子も多く、賢い子どもも多い。故に少年院に入るようなことをしてしまった子どもも多いが、故にそういう人間がまっとうに生きよう!と思ったときのエネルギーはこれまたすごい場合も多い。そうした子どもたちが過去の失敗のせいで未来を閉ざされていることは、彼らにとっても社会全体にとってもマイナスでしか無いと思う。

これは広報しない行政側の問題でもあるのだろうけど、勝手なイメージを捨てて、もう少し少年院に対して僕らはきちんと知るべきだと思う。

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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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