Archive for 10月 2009

【正しくあらねばならない】
教師の強迫観念が人間の幅を狭くするのかもしれない

その教育が目指すところはどこか。学校によっても、時代によっても違いがあって、たくさんあります。が、いずれにしても、共通しているところは、理想の人間像に向けて教え育てるということ。それが教育の目的の原点です。

理想の人間像に育て上げるためには、自分がその理想の人間像でなければならないと我々教育者は考えます。子供に教えるからには、自分がお手本としてそういう人間でなければ、子供たちにも語ることはできない、、、たいていの教師は、そういう考え方を意識、無意識に関わらずしている。強迫観念にも似た、そういう感覚ともいえると思います。

「完璧な人間はいない」

教師もまた人間である以上、完璧であるはずがないと思います。しかし、少なくとも子供たちの前では完璧でなければいけない。理想像に近い正しい人間でなければいけないという感覚に陥ることが多い。

これは「完璧になんかなれっこない、すべてにおいて正しい人間になんてなれない。けれど、そこを目指したい」という考え方とは、まったく異なる質のものだと僕は思います。自分は教師であるが、人間としての身の程を知っている人は、人間教育ができる。

その子供を理想像に近づけたいがために、指導する。指導するからには、自分は少なくともその点に関しては完璧にならねばならない。そういう脅迫観念にかられた教師は、やがて自分の枠の中に入る子供たちしか相手にできない教師になっていくのだと思います。

【いいなぁと思う本】
本気の教育でなければ子どもは変わらない (シリーズ教育を考える)



原田 隆史 (著)
単行本: 223ページ
出版社: 旺文社 (2003/10)
発売日: 2003/10
心を育てれば子どもは必ず変わる。荒れた中学校を立て直し、陸上部を7年間で13回の日本一に導いた、原田隆史の教育。
(amazonより)






同じ教育者として、刺激を受ける部分があります。

本気の教育でなければ子どもは変わらない (シリーズ教育を考える)

【試験後の生徒の反応】
努力した自分の結果を確認したいという気持ち


Photo by The Master Shake Signal

今日は中間試験終了後、久々の授業でした。授業をしようと教室に行くと生徒たちが「え、先生、試験は?」という声。実は、まだ採点ができていない僕。「ごめん、まだなんだ…」というと、「さいあくぅ~~」という声、声、声。

…何が最悪なんだ!?

試験を返す日は新しい学習に進まないので、それを欲しているのかと思いきや(そういう子もいるかもしれないが(苦笑))、どうも自分の点数が気になるらしい。ということは、自分の努力の成果を早く確認したいということなのだろう。

これはとても健全な反応である。英語が苦手な子供も多いが、苦手なりに努力した自分の結果を確認したい。勉強に対する意識がそれだけあるということ。こういう意識を持ち始めたとき、生徒たちは少しずつ学習力がついていくのだと思う。

【放課後の活動を充実させたい】軽音部員からのあらたまったお願い

先日、軽音部員の二人が、あらたまって僕のところに来ました。「ちょっと、話聞いてほしいんだけど…」なんだ、、、なんだ? なんか悩み事か?なんて思って話を聞いてみたら、余市近辺の高校の軽音部と合同のライブを開きたいという。

「なんで?」とこういうとき、僕は必ず聞きます。

「最近、軽音部のメンバーが少なくって、盛り上がったライブを体験したい。あと、その準備も含めて放課後にいろいろ活動したい。余市の高校生と交流したい」という。

なるほど。オトナ風にいえば、豊かな体験を求めている、充実した放課後の活動を求めている、地域との交流を図りたい、といったところか。こういう経験を高校生のうちにすることはとても大切なこと。よし!と僕はひざを打った。そういう活動は応援したい。

じゃぁ、、、ということで出した課題は、まずは企画書を作っておいで。日時・場所・目的・実施方法・準備に必要なことなど、それらを含めた企画書。どういうものが出来上がってくるかわからなかったが、まずはその頭にあることを出させてみたい。立派に作ってきた。これからの動きが楽しみだ。

【みなさん、ありがとうございました】
すがすがしい気持ちです


Photo by notariety

14日から函館方面、室蘭・伊達・苫小牧方面の中学校・高校を訪問させていただく旅も無事終わりました。総移動距離約900KM、訪問学校数24校。突然の訪問にもかかわらず、そして各先生方忙しい中にもかかわらず、快く対応してくださった方が多くて、本当に幸せな気分でした。中には授業前にもかかわらず、できる限り熱心に耳を傾けてくださった先生、「また改めてじっくり話を聞かせてください。興味があります」とおっしゃってくださった先生もいらっしゃって、みなさんの教育に対する思い、生徒の進路指導に対する思いを感じて、私自身疲れた体に元気をいただきました。


今回うれしい思いをたくさんさせてもらったのですが、その中の一つに高校の先生方とのお話があります。なにがうれしかったかというと、どの高校の先生方も北星余市に転校した生徒のことを案じてくれていたこと。「どうなってるのか、気にはなっていたんです」とおっしゃる先生が多かった。そして「北星余市ではこうやって頑張っています」と伝えたら、みなさん一様に「うれしいなぁ~」と感慨深げに話してくださったことでした。


私も担任をしていて、卒業まで導いてやることのできなかった生徒がいたとき、人とのめぐりあわせ、学校の環境、育ってきた経過、様々な要因が重なっているとは思いつつ、「なんでこいつはわからんのだ!」という腹立ちと同時に、それ以上に教育の限界と自分の力量のなさを切なく感じ、眠れない夜を過ごすことがあります。訪問させていただいた先生たちの「うれしいなぁ~」という短い言葉の中に、その思いを強く感じました。


そして、高校の先生たちの去らねばならないような子供に対する思いというのも感じ、その思いに私自身がうれしい気持ちにさせてもらいました。「残念ながら、自分たちの力量不足で救えない子供もいる。けれど、そういう子供の人生は今後も続いていくわけで、私たちの学校を去らねばならない状況になったとしても、どこかにつなげてしっかりと高校生活を送って、成長して、人生を豊かにしていってもらいたいという思いがある。そういうときに、通信制高校以外にも、北星さんのような存在があるということは、この子たちにとっても、私たちにとっても救いである」そんなうれしい言葉をいただきました。


今回の3日間の出張の疲れ、とてもすがすがしい疲れです。本当にありがとうございました。また、どの先生たちともゆっくりお話をさせていただきたいと思います。おやすみなさい。

【いじめを通じて】
その経験を人生の糧にする、そこから何を学ばせるか

「いじめをなくそう」という取り組みは大切なことだと思います。大切だと思いますけど、いじめをこの世からすべてなくすことは不可能だとも思います。また、いじめを通じて何を学ばせるかが教育現場においては重要なことだと思ったりもします。決していじめを肯定しているわけじゃありません。そして「いじめをなくそう!」と声高らかに、そういう取り組みをしている人を否定しているわけでもない。

いじめなんて、ない方がいいに決まっているけど、いつの時代も、それは子供の世界のみならず大人の世界においても、また人間以外の生物においても、いじめ、またはそれに類するものは存在するのが現実です。問題はその子供の世界におけるいじめに対して我々大人がどう向き合うのかということもまた、「なくそう」とする運動と同じくらい、またはそれ以上に大切な事柄なんじゃないかなと思うわけです。



Photo by Torley

アンテナを高くし、いじめを最小限の時点で食い止める。そして、その当事者同士の指導を徹底する。これがうまくなされれば、子供たちは大きく成長する。そういう経験もまた、ときに子供たちにとって大切な事柄なのだと思うわけです。

【今日から中学校訪問】
先生たち、ご報告にお伺いします!

今、函館に到着しました。先日のブログで札幌圏一斉中学校訪問のお話をちょっとしましたが、実は今日14日から全道各地の中学校や高校を訪問させていただきたいと思っております。

その一番の目的は、先生たちの教え子でもあり、私たちの教え子でもある生徒が、いまどういう生活を送っているのかを報告させていただくことです。全国のみならず、全道各地からも生徒が来ている本校ですが、地元を離れてきているのでなかなか前の学校の担任の先生にお会いして様子をお伝えしたりすることができずにいて、心苦しく思っています。地元にいればそれなりに情報というのは入ってくるものだと思うのですが、離れているとなかなか。

私も担任をしているのでよく思うのですが、ふとした瞬間に自分が担任を持った時の生徒のことを思い出しては「あいつ、どうしているかなぁ」と、そういう気持ちになって30秒ほど宙を見ていることがあります。教師という仕事は、自分のしたことが成果としてどう表れているかを判断しにくい職業だと思います。その子供がどう成長していくか、それは一人の教師の力ではなく様々な因果が絡み合ってのことですし、そして成長が表れるのは決して短いとは言えない時間が必要になってきます。

「悩みつつも苦しみつつも、前に向って幸せに生きている」個人的にはそういう状況が、客観的な幸せな状態であり、生き方なんじゃないかと思っています。自分の受け持った生徒が、はたして前に向かって幸せに生きていけているのか、具体的にどういう状況なのか、自分が関わった子供たちに関してそういったことを私自身が知りたいので、おせっかいながら北星余市に送ってくださった先生方には、お伝えしたいと思ってる次第です。

教師をしているとその人生の大半は、子供のことを考えているわけでして、自分の人生をかけたこと、つまり子供たちを成長に導いていきたいという思いからくる生き方が、どのように形としてなりつつあるのか、先生たちにとってもきっと明日の糧にしていただけるのではないかと、生意気ながら思う次第です。

なにより、私自身が、生徒の成長がうれしくて、喜びを共感したいだけなのかもしれませんけれど。
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【活気ある生徒たち】私学フェスティバルがありました!

昨日10月12日(月)は札幌・苗穂にあるアリオ札幌さんで、私学助成金運動の一環である私学フェスティバルが催された。私も参加したが本校からも40名ほどの生徒が参加した。この私学フェスティバルは、数年前から毎年この時期に行われており、札幌圏の学校はもちろん、帯広や旭川など全道各地の私立高校の生徒たちが集まって企画段階から練り、行われているフェスティバル。


<参考>
http://www.hokusei-y-h.ed.jp/blog/


各校はそれぞれ自分たちの学校で出し物を用意して披露する。本校からは私が顧問をしている計音部から2バンドが出場。そして、「情熱大陸」のテーマソングに合わせた踊りや南中ソーランなどの踊りにたくさんの生徒が参加した。


彼らはただなんとなく参加しているのではない。私学助成金とは何かを理解したうえで、自分たちの高校の一端でも皆さんに見てもらいたい、知ってもらいたい。その自分たちの充実した高校生活が、私学助成金という補助金で成り立っており、財政不足の折、補助金が減らされそうな中、みなさんの署名の協力があって毎年現状維持ができていることに感謝をしつつ、こういった企画で楽しいひと時を過ごしてもらって、恩返しをしたい。そうして、自分たちが充実している高校生活を維持し、またそれを未来の後輩たちにもつなげていきたいという思いを持っての活動だということが、私は素晴らしいと思うのである。私学フェスティバル実行委員会の委員長は、今年度本校生徒が担っていたが、委員長のみならず、どこの学校から来ている委員も精一杯がんばっていたのが印象に残っている。


本校の生徒の場合、生徒たちがすべて自分たちで企画をし、練習をし自主的に参加していることが我ながら素晴らしいと思う。学校にある15人乗りのマイクロバスに乗りきれなかった40名近くの生徒は、それぞれの先生たちの車に分乗して札幌まで降り立った。生徒がそれだけ自主的に参加するこの企画、先生たちはうれしい悲鳴を上げながら、札幌まで送り迎えを笑顔でしていた。

【資料作成の一日】
やるしかない、前に向かって。

今日から三連休。


この三連休の最終日12日には、札幌で私学フェスティバルが行われる。私学フェスティバルとは、私学助成金運動の一環で数年前から生徒主導で行われている取組み。今年度は、苗穂にあるアリオ札幌で開催。たくさんの生徒が参加する予定。私も行きます。


今日は2週間後に行われる会議に向けて、書類作成の案を考えていた。一定の方向性が見えたが、どうにもこうにも厳しい状況には変わりはない。説得力あるものがなかなか思い浮かばずにいたが、とにかくやるしかないということである。

【事務作業は少ない方がいい】
札幌圏中学校訪問の準備

今日は、授業や生徒対応などの間を縫って、10月22日(木)に行う札幌圏中学校訪問の準備を丸1日かけてやっていた。毎年この時期に本校教員は札幌圏の中学校を訪問させていただき、入試要項の説明と本校受験希望の生徒がいるかをお聞きすることにしている。


毎年やっていることにも関わらず、準備に丸1日かかる。毎年やっていることであれば、仕組化して準備にそこまでの労力をかけるような状態にしておくべきではないと思うのだが、その仕組化が完全にはなされていないのだ。一般企業において、顧客データの管理は何よりも大切なものであって、あって当たり前のもの。それは必要経費のうちだろう。


私立高校でもお金のある高校はデータベースの構築を外部に委託し作成することができるが、北星余市のように小さな高校ではそれがなかなか難しい。教員が一つ一つ手作業で必要に応じて仕組化する必要がでてくるのである。


今回、私は丸1日かかったわけだが(間に授業などもあったが)、以前は学校の一覧を用意し、地図を広げて位置関係を把握して、割り振る作業も必要で、もっと大変だったのだろうと思う。


ああ。できるだけ、こういうことに割く時間は少ない方が良いのに。

【感じる力】
学校見学をする子供たちの力

今日は転入試験が一件入っていた。仲間が増えることは本当にうれしい。生徒たちも同じ気持ちなのだろう。北星余市には、たくさんの人たちが学校見学に来る。なかでも途中で転校を考えたり、来年度の入学を考えて学校見学をする子供が、月に数名来る。


Photo by bp6316 is alive

学校見学に来る子供は、たいてい緊張している様子だが、うちの生徒たちはそんなことお構いなしに、見学している子供に声をかける。遠慮の知らない連中だが、その姿が愛らしい。私にとっての自慢である。「入学するの?」「どこからきたの?」「うちのクラスにおいでよ!」 おいおい、まだ受験も決まってないのに…。そんなウェルカムモードが漂っている。それがとても嬉しく思う。

学校見学に説明は大して要らない。親御さんにしてみれば、どんな学校なのか、とても気になるところだろう。まして、北星余市の一部のみがクローズアップされて、マイナスのイメージを持たれている方は不安だろうと思う。質問があれば答えるし、そういう親御さんには、できるだけ正確に「北星余市」を伝えたいとも思う。

けれど、基本的には、学校の中を見ればわかる。特に、子供達にはそれがわかるようで。北星余市に流れている雰囲気というか、空気というか、それを「感じる」のだろう。

私は学校見学の対応をするたびに、そういう子供たちの「感じる力」も嬉しく思うのである。

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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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