Archive for 10月 2013

子ども・若者支援地域ネットワーク形成のための研修会で講演。



静岡県立大学公認のサークル、若者エンパワメント委員会(以下、YEC)が主催する子ども・若者支援地域ネットワーク形成のための研修会の講師として依頼を受けて静岡県沼津市にお邪魔してきた。

YECとは…講演依頼を受けた担当者からのメールを抜粋。
YECは社会の流れに委ねてしまっている若者に対して、若者自身の「可能性」を発揮する機会や場づくりの手助けをするために発足された静岡県立大学公認サークルです。
http://ameblo.jp/youth-empowerment/
このYECは内閣府の講演事業の委託を受けたのだとか。
この講演会は、平成25年「子ども・若者支援地域ネットワーク形成のための研修会事業」という内閣府の研修会事業です。社会生活を円滑に営む上での困難を有する子ども・若者への総合的な支援を、社会全体で重層的に実施していく必要があり、研修の実施を通じて、子ども・若者支援に関わる様々な関係者の資質向上を図り、子ども・若者地域支援ネットワークの形成に資することを目的としています。
その中で「学校教育における社会参加〜シティズンシップ教育と学校民主主義」というテーマでお話をさせていただいた。まぁ、話したことは、北星余市における生徒会執行部の思いと動き、それを学校としてどう考えているのか…といういつものお話。

学校という場での経験が、子供たちにその後の社会生活で大きな影響を及ぼすとするならば、その学校生活創りというものも、もちろん、社会の一構成員としての在り方に大きく影響することになる。これは、子供たちが社会に出たときに、どういう社会を創っていくかについて、非常に重要な要素である。YECの団体説明にもあるように「社会の流れに委ねてしまっている若者」は多い。自らが自立し、社会に参画し、住み良い社会を作り上げて行くのだということを学ぶことは、学校の存在意義の一つであると思う。

北星余市では、基本的に学校行事や日常の取組を生徒たちに取り組ませている。ひとつひとつの行事も、生徒会執行部が夜遅くまで残り議論をして、原案を立てる。それをクラス役員の集まる評議員会におろして、各クラスで議論して、意見集約をし成案とする。そして、ひとつの行事に向かって取組を始める。私たち教員は小間使いであって、時折、考える材料を適度にさらっと提供する程度の役割である。「先生、これってどうなの?」なんて質問に「ん?わからん、執行部に聞け」ということもしばしば(もちろん、臨機応変に)。だって、先生たちの取組じゃないもん。「わからないことをなんでも先生に聞くんじゃない」「自分たちで直接主催者に聞きなさい」「自分たちで考えなさい」そんな感じ。失敗?多いに結構。問題?それまた結構。教師にとっては面倒くさいことだけれど、そういう出来事が起これば、またみんなで考えればいいじゃないか。そうやって社会は創られていく。

他の高校の生徒会執行部と合同で行事を進めるときに、生徒が先生の顔色をうかがいながら発言をしていたり、生徒同士の話し合いでまとまりかけていたものを、教員の一言でひっくり返し教員がまとめてしまうという場面をみかけるが、そんなことは「社会の流れに委ねてしまっている若者」を生むだけだよな…と思う。

そんなことを思いながら、北星余市の生徒会執行部の動き、それを受けた各クラス、そしてそのクラスの中での各生徒たちの動きについて、話をさせてもらった。

しかし、この取組を大学生が行っていることが僕はすごいと思う。つい、こういう大学生を見ると、自分の大学時代が少し恥ずかしく思うくらい。実直に、でも楽しみながら、こういうことについて、真剣に取り組んでいる。いい刺激をうけた。

最後の全国のつどいin北海道の実行委員会。

今日は2013年8月に行われた登校拒否・不登校問題全国のつどいin北海道(http://zenkokunotudoi2013.jimdo.com)の最後の実行委員会だった。昨年の12月からほぼ毎月のように帯広に日帰りで通った。実行委員会といっても実際はほとんど準備はしていない。実行委員会は、現地で事務局をされていた不登校登校拒否と向き合う親の会・はるにれの会皆さんを中心に、帯広地域の皆さんが準備してきたものに対して、全国から集まる皆さんにとってそれが良い物となるかどうか、意見を出し合う時間がメインだった。事務局の皆さんにとっては、さぞかし大変な1年だったと思う。北星余市からは10名の教員が当日参加して、世話人という形でお手伝いをした。各分科会の司会や書記、連絡係などを担当し、全国から集まる方、不登校で悩んでいる方、そういった方たちを支援されている方達と有意義な時間を過ごさせてもらった。

深夜1時過ぎても事務局の皆さんが本部で笑いながら今日を振り返り、明日のためにニュースを書いていたことが、今でも思い出される。何かを決めるわけではない「つどい」。つどって、思い思いの時を過ごす。それは心地よい時間だった。


今日はそのつどいの最後の実行委員会。まぁ、企画をたくさんの人で運営するということは、それぞれの思い、まして全国で思いの集まっている人達ばかりだから、その強さもあって、そして文化もあって、それぞれ思ったことはあっただろう。けど、本当にいい集まりだったんじゃないかって思う。

今までは実行委員会が日曜日に開かれ、翌月曜日は学校があったので日帰りして懇親会に出席しなかったが、今回は最後ということで懇親会に参加させてもらった。実行委員会に参加したり、世話人をしていたとはいえ、こういう懇親会のような場で話すのとはまた違う。もう少し、近い距離で話すことができる懇親会は楽しい。

その中でとある方からありがたい言葉をいただいた。「私も色々あったけど、北星余市はやっぱり、ちょっと違う学校だって思った。不登校で悩んで苦しんでいるまっただ中の親の気持ちを理解しようとしてくれている『学校』はそうそうない。というか、他には見たことがない。唯一つながることができる学校だと思った」と。

北星余市はこれまで29年間、不登校や非行、高校中退で苦しい経験をしてきた子供たちを受け入れて来た。その多くの子供や保護者から、北星余市につながる前は、人生の道を外れ出口のない暗闇をさまよい続けているようなものだったと聞く。

安定した給料と職に就くこと、欲しい物を不自由無く買い求めることができる生活が幸せな生活で、そういう生活を送る者が成功者とされる価値観。そのためにお勉強をし、テストの点数をとり、部活に精を出し、いい高校に入り、いい大学に入ること、そういう価値観を一般的に植え付けられている人達が多い。そういう価値観を持っている人達からすると、不登校や非行というものは人生の道をはずれ、しかもそれは戻ることのできない失敗であるととらえるのもわかる。私も北星余市で教員を務めなければそう思い続けていただろう。

しかし、北星余市の生徒たち、卒業生たちを見ていて、不登校や非行、それ自体はなんの問題もないことだということがわかった。そういう経験をしている人達が、そのままの流れの中で、自分を否定し、世の中に受け入れられないままにいることで苦しい生を送っている傾向があることはある。しかし、それはそういう経験をした後に、適切な考え方ができなかっただけのことであって、不登校や非行をしたから人生が終わったわけではない。大丈夫、人生終わったわけではない。闇でもがいている苦しみを感じているかもしれないが、希望は必ずある。

長崎、奈良と過去2年間、このつどいに参加して来た。自らの土地、北海道で開催されるにあたって、僕はそういうことを、今不登校や非行で悩んでいる子供、それを支える家族の方たちに少しでも感じてほしいと思った。このつどいには沢山悩みを抱えてくる方もいるが、一方でそういった価値観を口で説教するとかそんなのではなく、出会い、語り合い、笑顔でふれあうことで、悩みを抱えている方達が、自然とそういうことを心と身体で感じて帰って行かれることの素晴らしさを感じていた。だから、そういう場で自分たち北星余市ができることはないか…ということを考えていた。

僕のそういう思いを、誰がどう感じてくれたかはわからない。けれど、飲み会も終盤、最後に酔っぱらった、半ばべらんめぇ口調で、温かい言葉を私に投げかけてくれたことで、僕のその思いを感じてくれていた人がいたのだと知った。その言葉が僕が心をとても温めてくれた。僕もまた元気と勇気をもらった、そんな素敵なつどいだった。

PTAOBが余市に。ありがたい余市町への思い。

今日は45期PTAOBがはるばる余市までやって来てくれた。2013年11月10日(日)に東京で開催される「イキイキと生きる進路をひらくために」~親・学校・地域にできること~というイベントで、余市町の果物などの物産を販売するために、余市町や農協を回って打合せ。そのためにきてくれた。わざわざ、北海道まで。

北星余市のPTAは、北星余市を愛してくれている。北星余市のみならず、3年間、子供たちを育んでくれた余市町という町まで愛してくれている。今回のイベントでの物産販売も、利益抜きでイベントに来てくれる人達に、余市の味覚を堪能してほしいという思いで動いてくれている。なんとありがたいことか。

不登校や非行を経験したり、そうでなくても進学校での勉強に疲れたり、部活動で故障してしまったり、一旦入った高校で目的が見つからず中退したりといった挫折を味わってから、やり直しをかけて来る子供たちの多い学校だが、そういった子供たちを育むには、地域の包容力なしにはなし得ない物がある。生徒減に悩まされる北星余市を思って「札幌等の都市部でこの教育をやってはどうか?」と提案してくれる人もいるが、この教育はこの土地だからできる面が大きい。そんな余市町で3年間の高校生活をし、子供たちの成長を与えてくれる土地への感謝と敬愛の念がこもっている。本州の百貨店やイベントなどの物産展で「余市」の文字をみるだけで、ついその商品を買ってしまうほどらしい。

夜は先日のブログで紹介した11月のイベントの打合せと称した飲み会。校長と松本さんも余市に合流して。楽しい時間だった。

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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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