Archive for 9月 2011

明日、北星学園余市高等学校の学校祭にお越しになる方へ。

これは、つい先ほど、12:30頃に学校を出る前に撮影した45期3年C組のクラス企画の内装の様子。


ごらんのとおり、完成していない。しかし、明日が本番。3年生には、たまにある現象。

「え?3年生で期限までに完成されないの?それってどうなの?」
とも思える。担任の力量の問題?クラスに団結力がないから?生徒が一生懸命やっていないんでしょ?

いやいや。


このクラスの内装、近くで見てみると、段ボールを1枚1枚タイル状にきって、それを壁に貼り付けている。これがどういうことなのか。

現在、各クラスの人数は27名ほど。この中で、クラス企画は内装班3分の2、調理班3分の1くらいにわかれての作業となる。クラスによって違うけど、だいたいそんな感じ。そのなかで、色々な才能が開花する。普段からデザインセンスがいい子がいる。絵を描くのが好きな子がいる。クラスの連中は普段の生活の中で、何気なくそういうのを感じていて、こういうときに、スポットライトを浴びせる。いや、実際は、その子しかできないから頼っているだけなんだけど。

デザインをするのが得意だからといって、仕切る力まであるとは限らない。そういうことの得意な子っているわけで、デザインをした子の意図をくんでみんなに伝える。そこから、内装をどのようにするかの議論がスタート。「こっちのほうがいい」「こんなのできるわけない」「いや、これがいい」うんぬん、ぶつぶつ。

だいたい、大量の段ボールに色を塗って、それをタイル状にカットして、壁一面に貼り付けるなんて、なんて非効率なことなんだろうと思う。一枚一枚のタイル状の段ボールにテープかノリか、いずれにしても付けて貼っているわけです。びーーーーーっと、大きな段ボールに、だーーーーーっと色を塗って、ボーン!と貼り付ければ、楽で手間もかからず、人手も少なくて済む。時間も短くて済む。

けど、この非効率からしか生まれないものもあるわけで。大切なことは「形を作ること」ではないのである。

各々、段ボールをお店からいただいてきて、塗料を買ってきて、ひたすら塗る。ひたすら切る。いつ、終わりを迎えるともしれない作業を黙々と続ける。ふと、横を見ると、サボっているやつがいる。ああ、鼻につく。けど、不満を持ちつつ、黙々とやる。それぞれが、それぞれ、だいたいそんなことを想っている。そのうち、そういうサボっている子に限って、文句をつけてきたり、茶化したりする。あああ、これには耐えられないと、そこで喧嘩も起こる。

さぁ、クラスの雰囲気が悪くなる。けど、学校祭だ、クラス企画を成功させたい。そういう思いでがんばっているのに、こんなことで投げ出したくないから、率直にいう。向き合う。そうじゃなく、担任にいってくるときもある。そういうときは、朝のホームルームでしかけることもある。3年生ともなると、サボっているやつは、べつに悪気があるわけではない。ただ、自分の行動が見えていなかっただけなことが多い。いや、自分は、ちょっと特別だと思っていたのかもしれない。そうして、みんなで取り組んでいく。

時間がない。ああ、切羽詰まってきた。このままだと、当日までに間に合わない。「どうする?」「これは、朝早く来てやらなかったら間に合わないでしょ」「そうだね、やるしかないね!」とそういう雰囲気で固まりつつある所に、「明日何時?」「え、7時集合にしようって話してたんだけど」「えー?はやっ、めんどくさーい」ということを悪気なく言う子もでてくる。ちょっと、カチンとくる瞬間でもある。「でも、間に合わないからさ、がんばろ?」と声を掛け合う。いや、そこでまた、勃発することもある。

色々な人が、色々な交わりの中、それぞれの感情を抱きながら、そんな中で力を合わせての、クラス企画なのである。

この間、担任は裏方に徹する。必要最低限のことしか手や口をださない。

このクラスがそういう状態だったかどうかはわからない。けれど、それが目に浮かぶ。あああ、なんてリアルな人間関係なんだろうと思う。

きっと、そういうことを経ての、現状なのだと思う。

このクラスの今のような「やばい!時間がない!完成するか分からない!」これも、また一つの仕組まれたイベントである。このときに、焦る子、適当に済まそうとする子、最後まであきらめずクオリティを追求し続けようとする子、どうしていいか分からず呆然とする子がいるのである。そんな中、限られた時間で、切り抜けるという経験を絶対にするのである。


僕は、今年は忙しくて、学校祭を一切見に行けていない。ま、そんな年があってもいいかもな…当日といつものギャップを味わおうか、と思っていたが、なんだか、帰りにぷらりと散歩する気になって教室棟を歩いていた。そうしたら、未完成のくせに、圧倒された。

何枚あるのか、それだけ人がいて、手が動いて、交わりがあったのだと、空気が伝えてくれる。

明日、お越しになる方がいらしたら、ぜひ、このクラスを見てあげてください。こんな中途半端な状態が、この土壇場でどう変化するのか。いや、そのままかもしれない。その裏にどんな人間関係があるのか。そして、そんな準備をへて、生徒たちがどんな顔で北星祭という時間を過ごしているか。


そう、41期3年C組も確かそんなんだったような気がする。



Profile

北星学園余市高等学校で教員をしています。
Instagram