子どもたちの育ちあい~現代の思春期・青年期を考える~ /エルムアカデミー より。『自己肯定感情』を育てる(坂口先生)のことば。


子どもたちの育ちあい~現代の思春期・青年期を考える~ 発行:エルムアカデミー

『自己肯定感情』を育てる
坂口
今の子どもたちを見ていて一番危惧していることは自己肯定感情が低いことです。自分のことを肯定できないと他者との関係が切り結べない。他者の先には社会がある。その社会とどう切り結んでいけばいいのか、わからなくなっている。だから、子どもたちが他者と、そして社会とつながり、自分がどう生きていくのか、を考えるときの下支えになっているものが自己肯定感情です。
どのようにして自己肯定感情を育てていくのか。エルムで今、大事にしているのは自分を他者に向かって表現すること、自己開示をすることです。ありのままの自分の姿、ときとして、なかなか人に言えないようなことを他者に語り
それが受け入れられる。そして何らかの形で評価される。この一連の流れが非常に大事です。どんな場面でも、とにかく子どもたちが多くの他者と関わりながら、自己肯定感情を得るのかという観点を握って離さないように実践を組み立てています。
思春期の子どもたちは、だれもが「誰かに自分を知ってもらいたい」「相談したい」「一緒に考えてもらいたい」という気持ちをもっています。
思春期に入り自分のことが少し客観的に見えると、今まで自分の中で意識もされてこなかった自分のマイナス面が顕在化していきます。それが見えてくると「自分って何だろう」と、自分がわからなくなり、苦しくなります。だから、本当は誰かに「言いたい。伝えたい。わかってもらいたい」のだけれども、今まで一番身近にいた親とは、思春期特有の距離をとるために、本当のことはなかなか言えません。
学校の仲間にもやっぱりなかなか言えない。今の学校には排除の論理があるので、ちょっとでもみんなと違うことをするとすぐにハブられて、はじかれてしまう。本当の気持ちがいいづらい。だから、孤独になっていく。表面的には盛り上がって、仲良くしているように見えても、本当はすごく孤独で、「どうしたらいいんだろう」と、自分の気持ちを知ってほしい思いがある。一方で、「誰にも知られたくない」という矛盾する気持ちもあります。それは、子どもたちが劣等感、自己否定感情を抱えているからです。告白する、誰かに伝えるというのは、自分をさらさなきゃいけない。傷口をさらさなければいけない。それはものすごくいたい。「これ以上傷つきたくない」、だから「触られたくない」「いいたくない」という気持ちなんです。
ここからが本題です。子どもたちが僕ら教員に自分の本当の気持ちが言えた、少し自己開示できた。でも、これだけでは子どもたちは満足しないんです。落ち着かないのです。話を聞いてあげても、それは一時的に落ち着くだけであって、また元に戻っていく。なぜかと言うと、とにかく子どもたちの頭の中の大部分を占めているのは、やっぱり友だちだからです。思春期では友だちが決定的です。「友だちに自分がどう思われているか」「友だちと比べて自分はどうなのか」」ということです。「周りから自分が変に思われるんじゃないか」ということを、子どもたちはものすごく恐れている。
ですから、自分の抱えている者を友だちに自己開示できて、友だちから受け入れられて、友だちから評価を受けないと、子どもは本当の意味で安心できないし、自己肯定感情にはつながらないのです。
でえすから、同世代の友だちとどうつなげるか、同世代の友だちにどういうふうに自己開示させて、それを受容させていくか、ということをいつも考えています。

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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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