【好きなことを一生懸命やる】
「僕がああいうことをいったからそうしようというのではだめなんだ」


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團藤 そう、好きなことを一生懸命やる。遊んで勉強して、よく学び、よく遊びだね。そんな難しく考えないで。

伊東 法律に興味を持つ、ということが一番大切だし、また一番難しいのかもしれませんね。團藤先生は、岡山から上京されて東大図書館で最初にお読みになったのが大塩平八郎こと大塩中斎の『洗心洞箚記』だったのでしたよね?

團藤 その通り、陽明学ね。

伊東 ですから、入り方がどこかというのは、どこであってもいい、好きなこと、興味を持った入り口からでいいということですね。

團藤 その通りです。

伊東 それをもっと一般化して考えるのが大切そうです。團藤先生が大塩平八郎の次に読まれたのはドイツ語の原書だったわけですよね。

團藤 そうそう、次というか、同時にね。当時は毎日、本当に緊張してね、何というんだろう、意気に燃えていたね。とにかく自分の人生の門出でしょう。大学の門出は人生の門出だからね。だから何でも片っ端から読んだ。僕が一番初めに読んだ原書はイェーリングのローマ法の歴史だね。ローマって、法科に入るとローマ法から始めるでしょう? そうするとイェーリングを抜きにしてはだめなので、イェーリングのローマ法の歴史、『法における目的(Der Zweck im Recht)』そればっかり読んでいた。それと『洗心洞箚記』、さっきの大塩平八郎のね。あれは面白いですよ。


伊東 この頃の大学生は法学部に入ると、すごく咀嚼しやすく作られた教科書を与えられるのが大半で、原書はほとんど読まないし読ませないと思うんです。テキストから入っちゃうので、それの弊害がすごく出ているような気はしています。

團藤 最初は、訳が分からないのが一番いいね。だって初めから分かったようなつもりになっちゃったら伸びないものね。何でもいいから、分からないことにぶつかっていく。ぶつかっていくことが一番大事だ、何でも。だから、法律を始めてみたけど面白くなくて、理科を始めたと言っても全く構わない。理科をやっている間に、また法律に興味を持ったらそれでもいい。

伊東 大学時代、物理学科の2級先輩で茂木健一郎という人が、そんなキャリアを踏んでいます。

團藤 何でもいいから、好きなことをやっていることだね。自分からしないとだめですよ。誰かに言われて、例えば今日、僕がああいうことを言ったからそうしようというのではだめなんだ、自分でそういうつもりになってやらなきゃね。それが一番大事。




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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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