病院でもなく、また学校でもなく・安達俊子 安達尚男


特にここ数年の特徴は、ますますひきこもり期間も10年ー15年のような長期にわたる者が多くなり、必然的に年齢も高くなり、現在のビバハウスの最高年齢者は43・42歳と並んでいる。(国のニート対策の柱であるはずの若者自律塾も、入塾に年齢制限があり発足当初は35歳まで、さすがにこれは実態に合わないということで、2年前からは40歳までに引き上げられはしたが、彼らは依然対象外にされている。)これらの大半のケースが、親子間の確執によるものであり、多くの場合、若者たちの苦しみを理解できないと彼らが一方的に思い込んでいる両親、特に母親に対する暴力が付きまとっている。診断的には、必ずしも本当の精神病患者ではないが、家庭内暴力の為過程で家族とは暮らせない、社会的入院のような状態で行き先のない若者の為の、病院でもなく、また単なる勉強を教えるためだけの学校でもない、ある種の“転地療養”の場としてのビバハウスのような教育的訓練の出来る存在が、どんな施設よりもいま必要とされているようにも思われる。

これらの幼少期に現在ではたぶん「特別支援教育」の対象であったと思われる何らかの広汎性発達障害的要因を持った若者にとって現在何よりも大切なことは、再び若者の集団の中で「育ちなおし」を体験させることである。ともに同じような痛みや、苦しい過去を背負いながら、それでも必死に自立を目指す仲間の中でこそ、彼らは自らの新しい可能性を発揮することができるのだ。若者たち相互の成長を保証しえる日々の集団作りこそ、私たちが共に北星余市高校の教師として身につけた生徒指導、ホームルーム作りの真価が問われるところだと思っている。

(EarthZine 2009 Vol.9 「病院でもなく、また学校でもなく ~「青少年自立支援センタービバハウス」10年目の感慨~ 安達俊子 安達尚男)

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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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