NASAより宇宙に近い町工場/植松 努 (著)



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僕は小さい時から工夫をするのが大好きでした。だから、この世の中の人はみんな、工夫をするのが好きなんだろうと思っていました。ところが、会社を始めて、そして、生まれて初めて人を雇うことになったとき、履歴書を持ってうちにやってくる人たちの大半が、そうではなかったんです。興味を持ってない人、やる前にあきらめてしまう人、そして、自分で考えることを嫌がる人たちでした。
この人たちのキーワードは、
「いやあ、自分なんて」という「謙遜」と
「どうせ、無理ですよ」という「評論」でした。
34p-35p

「消費者迎合」を「顧客満足」と勘違いしている企業がたくさんあります。でも、これは顧客満足ではありません。顧客満足というものは、お客さんを「いやあ、すごいな」とうならせることにあります。お客さんをさらに成長させることにあります。お客さんをチヤホヤすることは、お客さんの能力を低下させます。
36p

では、この〇から一を生み出す仕事をするためにはどんな人たちが必要なのかというと、頭がいい人でも高学歴の人でもありません。「やったことのないことをやりたがる人」です。「あきらめない人」です。「工夫をする人」です。43p

しかし、物事には限度というものがあるそうです。僕の子どもの頃の行動を、いろんな学校の先生や教育関係の人たちに聞くと、「ああ、それは学習障害ですね」と簡単に言われてしまいます。当時こういうカテゴリーがなくてよかったな、と思います。
悲しいことに、今は「普通」じゃないと、「異常」だとレッテルを貼られて排除されてしまいます。でも、いったい、「普通」って何なのでしょうか。
うちの会社に、学習障害の施設の子どもたちが見学にやってきてくれました。どんな子が来るのか、来るまではちょっと不安だったんですが、その子どもたちは、今までに来たどんな学校の子どもたちよりも多くの質問をしました。多くに興味を持ちました。「やってみたい人、集まって」と言うと、全員が殺到します。
そして、とても優しい子どもたちでした。ちょっとそそっかしかったんですが、そんなものはなんとかなるものです。
彼らは帰りのバスの中から、バスが小さくなってもなお、手を振り続けてくれました。うちの会社の人たちも負けじとそのバスに向かって手を振り続けました。バスが 見えなくなるころに、うちの会社の人たちが泣き出してしまいました。
「あの子らが異常だと言われるなら、俺たちも絶対に異常だよね」と言うのです。
「あの子たちがどうして閉じ込められなきゃいけないんだろう。閉じ込めることによって、親がどんなに悲しい想いをしてるか分かるんだろうか。他の子にものを教えるときに邪魔になるからといって排除しているだけなんじゃないだろうか」そして、「本当にくやしい」と言って泣いているのです。僕も本当にその通りだと思っています。
64p-67p

僕たちが「普通」をつくりだしているわけです。僕たちは周りの人から影響を受け、そして周りの人に影響を与えています。普通というもののレベルは、いくらでも変えることが可能です。自分が子どもたちにどんな人になってほしいかを考え、それを助けるような「普通」というものをつくりだす必要があるのではないでしょうか。
僕たちが子どもに求めるものが、「おとなしくて聞き分けのいいこと」だとしたら、今のままでいいですね。子どもたちが黙っていて、前へ出ようとしないのがいいのでしょう。そうすれば、今のままの社会が続きます。でも、きっとそれはあまりいいことではないような気がします。
69p

(NASAより宇宙に近い町工場/植松 努 (著) )


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北星学園余市高等学校で教員をしています。
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